
(東大リリースより引用)
発表のポイント
- 野外の植物は、陽射しが雲で遮られたり木の葉が風で揺れたりすることで、光の強さが常に変動する環境にさらされています。このような環境は植物の光合成装置に負荷をかけ、特に「光化学系Ⅰ」にダメージを与えることが知られています。
- 光合成の制御において中心的な役割を果たす「シトクロムb6/f複合体」の量を減少させると、光合成の能力は減少するものの、一方で、変動する光から光化学系Ⅰを守る安定性が高まることがわかりました。
- この成果は、自然環境で育つ作物が強い陽射しや影といった変動光に負けずに育つ「レジリエンス」を高めるための技術開発に貢献することが期待されます。
(東大リリースから引用)
本研究の知見は、宇宙ステーションや将来の有人火星探査拠点など、閉鎖された人工環境下での食料生産というアストロバイオロジーの観点からも重要です。宇宙での植物栽培では、人工光(LEDなど)が唯一のエネルギー源となり、電力供給の変動などが光環境の急変につながる可能性があります。そのような極限環境では、生産性を多少犠牲にしても、決して枯れることのない「頑強さ」が最優先される場合があります。本研究で明らかになった光合成の安全装置は、宇宙のような特殊な環境で安定した食料生産を実現するための植物を設計する上で、重要な基盤技術となることが期待されます。(アストロバイオロジーセンター 河野 特任研究員)
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論文情報
雑誌名:Physiologia Plantarum
タイトル:Drastic Reduction in Cytochrome b6/f Complex Confers Robust PSI Photoprotection under Fluctuating Light at the Expense of Photosynthetic Capacity
著者名: Masaru Kono(*), Hiromasa Kodama, Keiichiro Tanigawa, Ichiro Terashima, Wataru Yamori
(* ABCスタッフ)
DOI:10.1111/ppl.70483
URL: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/ppl.70483