研究活動

ケプラー衛星による惑星候補の中で最も近い地球型惑星を発見


図1:地球とほぼ同じ大きさの系外惑星K2-415bが発見されました(図の右側の想像図)。ハビタブルゾーンより少し内側のため、表面温度は100〜140℃ですが、ケプラー衛星で最も近い地球型系外惑星です。(クレジット:アストロバイオロジーセンター)
概要

アストロバイオロジーセンターの研究者らを中心としたチームは,惑星が恒星の前を通過して食を起こすことを利用する「トランジット法」により,地球から71光年離れた場所にある赤色矮星K2-415のまわりを周期約4日で公転する「地球とほぼ同サイズの惑星」K2-415bを発見しました(図1)。また、すばる望遠鏡を用いて質量などに制限を与え、その組成が地球型惑星(岩石惑星)のものと矛盾がないことを確認しました。K2-415ほど軽くて低温度の恒星のまわりではこれまでトランジット惑星はほとんど見つかっておらず,そうした低温度星まわりの惑星の大気や軌道の特徴を調査する上でK2-415系は貴重な観測対象となります。また,K2-415bは2009年から2018年にかけて稼働したケプラー衛星によって見つかった惑星(候補含む)の中で現在地球から最も近い惑星となっており、今後、ジェームズ・ウェップ宇宙望遠鏡(JWST)などによる絶好の観測対象になるでしょう。この成果は、The Astronomical Journalのオンライン版に2023年2月27日付で掲載されました。(Hirano et al, 2023, “An Earth-sized Planet around an M5 Dwarf Star at 22 pc”)

研究背景

これまでに5300個を超える太陽系外惑星(以下,系外惑星)が発見されていますが,その大半は重さ(質量)や表面温度が太陽と似た恒星(太陽型星)のまわりで見つかっています。一方,私たちの住む銀河系内には,質量が太陽の半分程度以下の「赤色矮星」が最も多く存在していることが知られていますが,赤色矮星は特に可視光線で暗く観測が難しいことからそのまわりの惑星の大気や軌道等の特徴がどうなっているのか,太陽型星まわりの惑星ほどには良くわかってはいません。惑星の大気や軌道を調査する上で,恒星の前を惑星が通過する「トランジット惑星系」は重要な観測対象となりますが,特に質量が太陽の0.2倍を下回る「晩期M型矮星」のまわりでは,トランジットする系外惑星はこれまでほとんど見つかっていませんでした。

研究成果

研究チームは,2009年に打ち上げられたNASAケプラー衛星によるトランジット系外惑星探査の第二次ミッション「K2」で2017年から2018年にかけて取得されたデータを独自の手法を用いて詳細に解析し,地球から71光年離れた場所にある赤色矮星K2-415のまわりを周期4.02日で公転するトランジット惑星「候補」を発見しました(図2)。衛星トランジット探査ミッションで検出される惑星候補の中には食連星などによる惑星偽検出も多く含まれるため,研究チームは候補天体が本物の惑星であることを確認するために2018年から2021年にかけてすばる望遠鏡などを用いたK2-415の追観測を実施しました。K2-415は,質量が太陽の約0.16倍,有効表面温度が3000℃を下まわる非常に低温の恒星であるため可視光線では暗く,通常の可視光装置による観測が困難でしたが,低温の赤色矮星は近赤外線で明るく輝くという性質があるため研究チームはすばる望遠鏡に搭載された近赤外線分光器IRD(注1)を用いた観測を実施し,精密な視線方向の速度の変化などからK2-415の周りの惑星候補が地球の1.02倍の半径と約100〜140℃の表面温度を持つ本物の惑星(K2-415bと名付けられた)であることを確認しました。

図2:K2ミッションによるK2-415bのトランジットの検出。ケプラー衛星は長期間恒星の明るさをモニター観測することで,系外惑星によるトランジット(図では中心付近の減光)を検出します。実際には,K2-415の観測は約30分毎の測光観測であったため各トランジット中に平均2点ほどしかデータ点が存在しませんが,この図では恒星の光度曲線(明るさの変化)を折りたたむことで複数回のトランジット観測を重ねて表示してあります。(クレジット:アストロバイオロジーセンター)

なお,K2-415は2021年の終盤にケプラー衛星の後継機であるトランジット系外惑星探索衛星(TESS)によっても観測され,およそ80日間に及ぶ恒星の明るさの変化の観測からK2-415bによるトランジットが独立に検出されました(図3)。研究チームは,K2とTESSで得られたデータを組み合わせて解析し,惑星半径や周期などを精密に決定しました。

K2-415は,地球サイズの惑星を持つ最も軽く低温な恒星の一つで,このようなトランジット惑星系は有名なTRAPPIST-1系を含む4系(注2)しかこれまでに見つかっていません。トランジット惑星系では,トランジットの詳細な分光観測により惑星大気や軌道等の情報を調べることが可能となるため,K2-415bは特に低温な赤色矮星まわりの惑星の特徴を知る上で貴重な観測対象となります。また,K2-415は地球から約71光年とトランジット惑星を持つ恒星としてはかなり地球に近い(=相対的に恒星が明るい)ことも今後の観測において有利に働きます。ケプラー衛星は,2009年から2018年の観測で数千個に上る惑星やその候補を検出しましたが,今回発見されたK2-415bはこれまでにケプラー衛星が発見した惑星の中でも最も地球から近いことが確認されています(注3)。

図3:TESSミッションで捉えられたK2-415bのトランジット付近の光度曲線。灰色の点は約2分毎にTESSが取得した元の測光データを表し,誤差付きの青色の点は複数の点を合わせて平均化したものです。図1同様,複数回のトランジット観測を重ねて表示してあります。(クレジット:アストロバイオロジーセンター)

このような低温度星まわりの地球型惑星の大気や軌道はどうなっているかは、これまでの観測例が少ないためよくわかっていません。今回、地球に近いサンプルが観測されたことにより、JWSTにより今後その大気を詳しく調べることが可能になりました。また、地上大望遠鏡によりその軌道についての情報も得ることができ、惑星の大気や軌道の研究から、我々の地球とは異なる世界である低温度星まわりの地球型惑星の解明に迫ることができるでしょう。

注釈:

1) 参考:2018年7月2日ABCリリース 第二の地球を探す、新観測装置IRDが稼働!

2) K2-415よりも低温な恒星で地球型トランジット惑星を持つ系は,これまでにTRAPPIST-1,LP 791-18, LHS 1140, Kepler-42の4系のみが見つかっています。

3) ケプラー衛星による発見以外では,近年主にTESSによる観測でK2-415よりも地球に近いトランジット惑星系が見つかっています。ただし、K2-415のように地球型惑星を持つ系は14例程度です。

論文情報

掲載誌:The Astronomical Journal

論文タイトル:An Earth-sized Planet around an M5 Dwarf Star at 22 pc

DOI:10.3847/1538-3881/acb7e1

著者:平野照幸,ほか