研究活動

ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮像した系外惑星の画像


図:1 画像は可視光による天体のデジタルカタログから抜粋された画像。下部にある4つの画像が、JWSTによる系外惑星の直接撮像の図。左が波長の短い3μmで、右が最も長い15μmでの画像。HIP65426の恒星の位置がそれぞれの画像の少し右上に★印で示してあり、全ての波長で系外惑星が写っている。(クレジット:NASA/ESA/CSA and A. Pagan (STScI))

2021年12月に打ち上げられた口径6.5メートルのジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST,注1)には、初期公開科学(ERS)プログラムと呼ばれる観測枠があり、JWSTの様々な観測機能の初期のチェックと科学的成果が期待されています。

そのERSプログラムのひとつに、JWSTの高コントラスト機能を開拓するプログラム(研究代表者:サーシャ・ヒンクリー、英国・エクセター大学)が採択されています。

今回、その高コントラストERSデータに基づく系外惑星の直接撮像画像がNASAから公開されました。7月12日に公開されたファーストライト画像には、直接観測によるものは含まれていないので、これがJWSTによる最初の直接撮像の画像になります。アストロバイオロジーセンターからは2名の研究者がこのプログラムに参加しています。

この画像は系外惑星「HIP 65426 b」を波長3~15マイクロメートルで観測したものです。JWSTの搭載された近赤外線カメラNIRCamと中間赤外線カメラMIRIで取得されました。背景は、地上の可視光での全天の天体のデジタルカタログから抜粋された画像です。明るく輝いている中心星からの光はJWST望遠鏡の高コントラスト観測機能(コロナグラフ)で除去されており、その近くにある惑星がすべての波長で撮像されました。波長5マイクロメートル以上の赤外線で系外惑星が撮像されたのは今回が初めてであり、JWSTが系外惑星の高コントラスト観測にも有効なことが証明されました。今回のデータから、この惑星の質量は木星の約4倍、温度は摂氏約2000度であることも示されています。

口径8.2mのすばる望遠鏡を用いたSEEDS(シーズ)プロジェクト(注2)でも系外惑星の直接撮像に成功していますが、地球大気・望遠鏡などによる熱放射の影響が非常に大きいため、観測波長は主に2マイクロメートル以下に限られています。一方、惑星大気の研究などには、なるべく広い波長範囲での観測が重要になり、とりわけJWSTが得意とする3マイクロメートルより長い波長での観測は貴重です。このように、地上望遠鏡では観測が困難な系外惑星や褐色惑星(惑星より少し重いが恒星になれない天体)の赤外線の高コントラスト観測において、JWSTは新たな地平線を開拓することが期待されます。

注1:ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)
2021年12月25日に打ち上げられた、アメリカ航空宇宙局(NASA)、欧州宇宙機関(ESA)、カナダ宇宙庁(CSA)が開発した、口径6.5mの宇宙望遠鏡。ハッブル望遠鏡の後継機とも呼ばれ、近赤外線〜中間赤外線の観測装置を搭載し、天文学のさまざまな分野での新しい成果が期待されている。

注2:SEEDSプロジェクト
すばる望遠鏡で実施した、太陽系外惑星およびその母体となる星周円盤の直接撮像を目的としたプロジェクト。2009年から5年間で120夜に及ぶ観測を実施し、系外惑星の直接撮像を複数成功させた。ただし、地上からの観測のため、近赤外線でも2μmより短い波長での観測に限られた。

関連リンク:
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(英語)

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